森を守り、新見の林業を支える人。仲田有志さん

総面積の86.3%を森林が占めるまち、新見市。
このまちの主幹産業である林業を生業にしているLOCALシゴト人のご紹介します。

岡山県の西北端に位置する新見市は、市域の約86%(6万8千ha)が森林!
この豊かな森林環境を活かして、古くから林業が盛んに行われ、先人たちが丹精込めて手入れし美しい森林を守ってきました。

全国的には、林業に携わる人は年々と減っており、農業と同じく高齢化がすすんでいます。
けれども新見市では、美しい森林を自分たちの暮らす地域の財産として今後も受け継いでいこうと、たくさんの事業体が活躍中。
若い世代が増えており、1次産業でありながら盛り上がりをみせています。

さて、2020年のニミログ新企画「LOCALシゴト人」は、この町で「働くひと」を紹介していくリレー形式の連載です。
トップバッターを飾るのは、ニミログライターの出会ったフォレスター。
事務仕事から山仕事へと転向し独立した仲田有志さんにお話を伺ってきました!

そもそもで「林業」とは?

 

林業とは、「森林を育成し、維持し、育った木を切って売る産業のこと」

50〜60年かけて大事に育てられた、その貴重な資源である森林をどのように活かし、どのように次の世代に受け継いでいくかを考え守り継ぐ仕事が「林業」です。

木をきって売るだけが林業ではなく、植栽し、育て、維持し、切る。それ繰り返していく事により、森林が守られているのだそうです。

手入れが行き届いた森林は林内が明るく、生態系も守られ、水や空気を作り出し、人々に潤いを与えます。自然環境を守るためにも、なくてはならない仕事だといえます。

森林組合の事務を経て、独立。 

仲田有志さんは、新見市神郷出身。

大阪経済大学を卒業後、地元の神郷町森林組合(現在は新見市森林組合)へ就職したのち、2012年の33歳で独立し「仲田林業」を起業されました。

約10年間、森林組合に勤めていたそうですが、主に事務仕事をしていた為、林業の知識はあれども現場の仕事は実質イチからのスタートだったそうです。

実際に、今どのような形でお仕事をなさっているのかを伺ってみました!

nami

夜明けと共に出発して、日暮れと共に家路につく。自然の流れと同じですね。
そうだな〜夏場の日が長い時期はこんな1日かな。逆に今の冬の時期なんかは、朝は7時頃に家を出ることが多く、夕方は早めに帰る段取りをしながら仕事を進めてる。あまり知られてないけど、季節に限らず森の中は日が暮れ始めると結構暗い。山の夜は危険だから、基本的に日没までが勝負の仕事です。

それに、農業や工事現場と一緒だけど、林業という仕事も天候に左右されやすいから、随時天気予報のチェックをするのが日課に。事務仕事時代にはなかった習慣だね。

お天道様の機嫌を伺いながら日々の仕事を組み立てています。

仲田さん

nami

自然相手だと自分の都合だけで仕事するには、限界があるんですね。
同じ林業業界でも、事務から山での仕事に変わり、実際のところどうですか?
だいぶ慣れてきたけど、まだまだ修行の身です。起業して7年経ったいま、やっと地に足がついてきたくらいの仕事ができるようになってきたくらいかな。

起業当時から、同時期に森林組合を辞めて起業された「多賀重機」の多賀紀征さんに、現場のノウハウを教えてもらいながら、現在でも同じ現場で仕事をしたり、情報の共有や相談など、いろいろお世話になっています。

仲田さん

 

 現場の仕事へチャレンジした理由は?!

nami

約10年間、事務をしてきたわけですが、なぜ現場の仕事を起業という形でしようと思われたのですか?
森林組合に勤めていた当時、手入れをしてほしいという地元の山主さんからの声がたくさんあったんです。

でも、森林組合は個人の山だけではなく国有林の管理などもおこなっているので、そういった要望にすぐに応えることができず、順番待ちになってしまうのが現状。すぐに手入れのできる地元の林業やさんがいないという事実に、もどかしい気持ちを抱くようになりました。
その気持ちはだんだんと大きくなり、誰かを待つのではなく、自分がやるしかないのかも、と。自分たちで地元の山を守っていきたいと思うようになり、現場の仕事をするため一念発起しました。

仲田さん

nami

フォレスターとして山に入り仕事していて、思うことは?
正直、フォレスターは、長年、現場で作業をしてきた人でも怪我や時には死亡事故が起きたりする危険な職業です。ただ、自分たちが作業して綺麗になった山を見ると、達成感とともに、何にも代えがたい充足感が湧いてきます。「山を手入れし地元環境を守る」ということに、とてもやりがいを感じてるのです。だからこそ、常に緊張感を持って、仕事に取り組んでいますね。

仲田さん

 

nami

仕事にやりがいを感じれれるって大事ですよね!
林業をしている方は熱い想いを持った方が多いようですが、仲田さんはどんな想いで林業という仕事を続けていますか?
そうだな〜

新見市は昔から、石灰業と林業が基幹産業で成り立ってきたまちだと思ってて、その一つである林業を絶やさずに、次の世代へとつなげていきたいと思っています。

あと、田舎には林業で生活していける仕事があるのだということ知ってもらい、林業の若手従事者が増えて欲しいですね。そうすれば山間部の過疎化への歯止めにもなり、相乗効果があるんじゃないかなと。

仲田さん

 

次の世代に繋げれる林業であるために・・・

現在、仲田さんはご自身の会社とは別に、「一般社団法人 人杜守」を前述の多賀さんらと2016年に設立。理事として、森林調査・管理・保全活動・環境保全の取り組まれ、大学生向けの林業体験ブログラムを運営したり、地元の小学生向けの出張授業を行ったり、木と触れ合うのイベントへボランティアスタッフとして参加なさるなど、積極的に活動されています。

nami

たくさんの活動をされていますが、これからの林業をどう盛り上げていきたいですか?
一つ目に、林業自体が補助金ありきの仕事になっているので、自立した産業となるような仕組みを考えていきたいのがあります。

二つ目に、林業という昔から営まれてきたものを「温故知新」の精神で、古き良きものは残しつつ、今の時代に合った、これからの林業を色々な角度から研究していきたい。

そのためにも数多くの人たちに、見て触れて体験する場を提供したいと思っています。

仲田さん

nami

次世代に林業を繋ぐあり方を模索なさっているんですね!インタビューに応えてくださりありがとうございました! 実は、この企画はこの町で働く人をリレー方式で紹介していく連載型コラムです。次の方のご紹介をお願いできますでしょうか? 
もちろん! 僕たちの会社が事務所を借りているYUNOSHOW(新見市移住交流支援センター)に最近ラボを構えた「白石須万子」さんにお繋ぎします。アロマ薬剤師さんで、香りの地産地消にチャレンジしようという素敵な女性なんですよ。

仲田さん

nami

香りの地産地消。なんだかワクワクするテーマです。早速お話を伺いに行き、インタビュー記事にさせていただきますね。ご紹介ありがとうございました! 

 

ライターから一言

今回の仲田さんのインタビューを読まれて、林業に興味を持たれた方に一度見てもらいたい映画があります。

それは、2014年に公開された「WOOD JOB!」という映画。
若者が林業の過酷な現場に悪党苦戦しながら、村人や自然との触れ合いで成長していく姿が描かれています。
林業という仕事とそれを生業にしている人たち、田舎で暮らすということなどが楽しく表現されていて、想像がつきにくい林業の世界が少し身近に感じれるような映画です。

もちろん、実際は映画のようにはいかず、もっと厳しい環境。
危険と隣り合わせの仕事なので、笑ってばかりではいられないかもしれません。
けれどもそんな環境の中、仲田さんがインタビューで応えてくださったように、熱い想いを持った人たちがいるから、日本の森は守られているのだと感じています。

先人たちが守り、それを今に受け継ぎ、そして未来へと繋げていく。

昔から絶えることなく営まれてきた理由がわかった気がします。
田舎ならではの仕事です。自然に触れながら森を守っていく、そして地域活性化へと繋がる、大事なLOCALシゴト人の紹介でした。

参考資料:
林野庁 林業労働力の動向
新見市林業担い手対策協議会

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