2021年より、新見市哲西町上神代にある光源寺(こうげんじ)の住職に就任された多飯皓成(おおいこうせい)さん。
前編では、多飯さんが住職になったきっかけや、地域での活動などを紹介しました。
ー前編URL差し込みー
お寺も後継者不足が問題になっていますが、多飯さんのような若い方が、地域を、お寺を守りたいと継がれている事に感銘を受けました。
後編は、”住職としての思い”や”地域を守り繋がりを大切にしていきたい”という、多飯さんの思いについて紹介していきます。
住職としての思い
nami
住職になられて5年目を迎えられたとのことですが、住職として大事にしていることはありますか?
このお寺は約350年(実際には329年)と長い歴史があります。
一度火で焼失して今の場所に再建されて約100年にはなるのですが、このお寺を信仰してくださっている、供養を務めさせていただいているお檀家さんが安心できるよう、この先300年も500年も続くお寺として残していきたいです。
そのためにも、お寺を綺麗に保ったり、いろんな行事を真摯に取り組んでいきたいと思っています。
多飯さん
nami
伝統といいますか、歴史あるお寺を維持していくって大変なことですね。
私一人だけではなく、妻や家族、お檀家さんの協力があるからこそ、守っていけているのかなと思います。
その守っていくということに、すごく責任を感じることはあって、地域の過疎化や少子化を肌で感じています。
20年前のお師匠さんの時にお参りされていた方が、今70代80代と高齢になられてお参りが大変になり参拝者が年々減ってきていますが、みんなで力を合わせ次の世代へ続いていくように頑張っていきたいと思います。
多飯さん
nami
過疎化だけでなく、世代交代でお寺との関わりが薄くなっている背景もあるのでしょうか?
それもあると思います。
新見市を大学などを理由に出て、そのままそちらで結婚して家を建てた時に、自分の家の菩提寺※(ぼだいじ)を知らないままでいる方もおられるので、お寺で供養されているご先祖さまとの繋がりが切れてしまわないように、しっかりと繋ぎ止められるようにしていかなくてはと思っています。
※菩提寺…先祖代々のお墓があり、葬儀や法要を依頼するお寺
多飯さん
nami
確かに、自分がどの宗派でどこのお寺なのか知らない方も多いと聞きますね。
それに加え昨今では、墓の守りができないからと墓じまいをしたと耳にすることが増えた気がします。
個人の考えとしては、現代の流れの中で自然な動きだと思っています。
墓じまいをして、別の場所で供養を続けていくなど、供養の仕方は一つではないと思います。こちらでも、身寄りがないなどの理由で生前に永代供養のご相談があるなど、いろんなケースをお寺として柔軟に受け止められる受け皿としてありたいなと思っています。
多飯さん
nami
お寺のあり方も時代に合わせて、形を変えていく時が来ているのですね。
今、そしてこれからの光源寺
nami
いろんな話を聞かせていただいて、やはりお寺は昔から人々の拠り所として存在してきたように感じます。
そうですね。
今は人の数も減って途絶えてしまっていますが、お師匠さんの時代には、書道が上手なお檀家さんが子供たちを対象に書道の練習をしたり、野球のスポ少の子供達が坐禅体験に来たり、御詠歌の練習に集まったりなど年代問わず人が集まる場所でした。
多飯さん
nami
地域の方達と寺子屋のようなことがされていたんですね。
少し話が変わるのですが、インスタで法要以外にも安産祈願もされているという投稿を拝見したのですが、お寺でも安産祈願ができるのは知らなかったです。
あまり知名度はないですが、ご依頼があれば務めさせていただいています。
最初のきっかけは、友人の奥さんが妊娠され、安産祈願をしてもらえないかと依頼があったことです。
自分が住職という生き方を選んだから、 友人からそういった機会がもらえ、僧侶として携われたというのが個人的には良かったなって思います。その後、無事生まれたという報告をもらった時は嬉しかったですね。
おそらく、どのお寺でも安産祈願はできると思うので、自身の菩提寺でしてもらうといいと思います。
また、お寺の本堂で仏前結婚式を挙げることもできます。私もこの光源寺の本堂で仏前結婚式を挙げましたが、荘厳な式になりとてもいい思い出になりました。
多飯さん
nami
冠婚葬祭の全てがお寺で行えるのは驚きました!
安産祈願=神社のイメージがありましたが、菩提寺でしていただければ、ご先祖様も喜んでくれそうですね。
今までは、お寺は年配の方との関係が深いイメージがありましたが、そうやって若い方が出入りされるとお寺のイメージもガラッと変わりそうですね!
そうだと思います。
小さな頃から、お寺に親しんで寄ってもらったり、法事などで子連れで来てもらえると、お寺って気軽に来ても良いところなんだと思ってもらえると思います。
法要後に皆さんでお茶をすることがあるのですが、お子さん用にアンパンマンのジュースやお菓子などお出しさせてもらうと、お寺でもこのような物がもらえるんですねと、喜んでもらえます。
老若男女世代問わず、お寺には気軽に訪れていただけたら嬉しいです。
多飯さん
nami
過疎化は避けられない事かもしれないですが、お寺がその地域の拠点として賑やかな場所になって欲しいものですね。
地域としての繋がりを大事に
nami
参加させていただいた坐禅会の後の茶話会にもお邪魔していたのですが、地域の方と多飯さんのお子さんたちが、触れ合っている様子などをみて、とてもほっこりとする時間だなって感じました。
私もそういう時間はいいなと思っています。
法要が一番大事なことですが、その後のお檀家さんたちと交流する場も同じように大事にしています。
昔は早朝のお寺の掃除後にお檀家さんと朝食をとっていたようで。
自分たちもコロナが落ち着いた頃に、妻が握ったおにぎりと、ご婦人たちが持ち寄ったおかずで一緒に朝ごはんを食べたのですが、あーいい時間だなって思いました。
多飯さん
nami
仕事の時間以外で、地域の方との交流を持てるのは素敵ですね。
仕事と生活の区切りが曖昧だからこそ、地域で生活している部分でもっと隔たりを作らずに、住職としての姿を見てもらえたらなと思っています。住職として相談の間口も広く持っておきたいし、柔軟でありたい。どんな些細なことでも聞いてもらいたいなと思います。
公式LINEでも、「四十九日の祭壇はどうしたらいいですか?」「お寺で法事をする際の持ち物は何を用意したらいいですか?」など相談をいただけるのは嬉しいことです。
多飯さん
nami
時代に合わせた相談方法も取り入れられているのですね。
最後に、今後の展望などあれば教えてください。
個人としては、地域の人口減少という動きはある種、自然の流れと思っています。
無理に流れにあがらうのではなく、それに沿ったより密接で丁寧な活動をしていきたいです。
そのためにも、一つ一つの法要をより丁寧に、準備や掃除においても綺麗にしてお迎えできるよう、来られた皆さんが「いい法要だった」「いい供養だった」と思っていただけるように、合掌一つにしてもお経の唱え一つにしても鐘の鳴らし方一つにしても、丁寧に務めたいと思っています。
また、いろんな方が相談を寄せられ、寄り添える柔軟なお寺でありたいです。これからは、御朱印を書いてみたり、法要の参拝のお土産をデザインなどしてみたいなと思っています。
多飯さん
この地域に生まれ育った一人として、住職として、地域の人が寄り添える場所・存在でありたいという多飯さん。
話す言葉一つ一つにも曹洞宗の教えの”丁寧さ”を感じる話をたくさん聞かせていただきました。
仏教という世界をあまり知らない私にとっては、お寺は遠い存在でしたが、もっと気軽に訪れていいところなのだなと学ばさせていただきました。
「地域や家族との繋がりを大切に」
若き住職だからこそ、時代に合わせたこれからのお寺の在り方がどう変化していくのか楽しみです!