世界屈指の縄文芸術に出会える 『猪風来美術館(法曽陶芸館)』

新見市には、廃校舎を活用したモノスゴイ美術館があることをご存じですか?
(※廃校の活用事例についてもう少しお知りになりたい方は、こちらの記事も併せてお読みください。)

冒頭でお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんね。

廃校となった小学校を美術館としてリニューアルさせ、北海道から招聘したアーティストと共に運営をスタートしたという猪風来美術館(法曽陶芸館)です。

廃校舎から猪風来美術館

2002年児童数減少の末、廃校となってしまった新見市立法曽小学校。

この場所に・・・13年前、降り立った世界屈指の芸術家がいます。古代の縄文文化を研究し尽くし、縄文造形を芸術として世に知らしめた縄文造形家猪風来氏です。

猪風来氏作品猪風来氏作品

氏は関東の芸術大学で油絵を専攻。
卒業後も油絵制作を続けていた青年時代・・・偶然にも散歩の途中、縄文の土器片を発見します。この出会いに内面から湧きあがる感動を覚えた氏は、その感動の所在を探求すべく縄文の世界にのめり込んでいきます。その頃は縄文土器の制作方法など確立していなかった時代。氏は千葉県千葉市の加曽利貝塚博物館に通いながら、縄文土器の復元を目指す同士と共に土器の復元を試みます。そしてついに2600年ぶりに“縄文野焼き技法”を復活させることに成功。更には、自身を縄文人の精神と同化させるため、北海道に住まいを移して、本格的な縄文土器、土偶の制作をスタート。以降、国内だけでなく海外でも精力的に活動の幅を広げ、数多くのギャラリー・展覧会に招かれ、世界的にも優れた評価を獲得していきます。

猪風来氏作品猪風来氏作品

気付けばこの時点で創りためた作品の総数はおおよそ1000点以上。これらを展示・収蔵する美術館がほしい・・・そう望んでいた猪風来氏は、友人を介して引き合うかのようにこの廃校舎に巡り会ったというのです。

そして2005年、新見に日本で唯一の現代縄文アートを展示する猪風来美術館が開館。

第五展示室森羅万象第五展示室 森羅万象

これを機に、氏は家族と共に新見に活動拠点を移すことになり、現在この新見の地で多岐にわたる活動を続けておられます。縄文アートを通じた制作活動を続けながら、“自然という生命のリズムから生まれてくる縄文人の精神性”を世に伝承し続け、今では時代の流行も後追いし・・・多くの若手がこの縄文アートに触発され門下生が集まっています。若手作家の育成に大変力を注いでおられる猪風来氏の息子で愛弟子の村上原野氏は、2017年クール・ジャパンの一環としてクアラルンプールで開催された「ARTs of JOMON(アーツ・オブ・ジョーモン)」展にも参加される腕前。すでに世界的飛躍を遂げていらっしゃいます。また、岡山市在住の女性門下生による初個展もプロデュースされ、現在その展示が同美術館にて開催されています。(→http://www.ifurai.jp/tenji/kikakuten.html

村上原野氏作品村上原野氏作品

猪風来氏の活躍はそれだけにとどまりません。

地元新見市法曽の伝統古陶である法曽焼の復活を地元の法曽焼同好会のみなさんと共同で果たし、さらには陶芸教室、縄文野焼き祭り等を通じて、地域市民に向けた振興活動にも熱心に取り組まれ、地域に根差す美術館として積極的に活動しておられます。これらの波及効果は大変大きく、市内外、さらには国内外から数多くのファンが集い、この美術館を訪れるというのですから驚きです。

野焼き祭り縄文野焼き祭り

16年前に廃校となってしまった小学校が、一人の芸術家によって命を吹き替えし、“世界へ誇る美術館”という姿で再現した奇跡に、目に見えない神秘を感じるのはわたくしだけでしょうか・・・。生まれ変わった廃校舎は、人々に“命を吹き込む美術館”として、今もなおその残像を残し続けているのです。

猪風来氏と村上原野氏右から、猪風来氏、村上原野氏、奥様で染色家のむらかみよしこ氏

猪風来美術館ホームページ
http://www.ifurai.jp/

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