森を食べたい / 森を食べたいに至る_話 00

 食べられる森

 

「わたし、農業しにきたんじゃないんで。」

 

決まり文句になりつつある。

 

2020年10月に提案型新見市地域おこし協力隊に着任した私の任務は

< 環境保全型農業である農林複合経営 ”アグロフォレストリー” の導入による地域振興>。

漢字が多くてチカチカするのは行政仕様だ。

要は、

使っていない土地に果樹や暮らしに使える草木を植えよう。

植えるときは、将来なるべく人の手が掛からないよう気をつけよう。

そして、これを広めよう。

 

ということが言いたい。

しかし、何度も言うが、農業をしにきたわけではない。

やりたいことは、 食べられる森の創造 だ。

 

「Forest garden / フォレストガーデンって知ってる?」

 

このワードを初めて耳にしたのは、2019年1月、年明けの数日後、タイ、チェンマイ。

移住前に旅をしていたときに出会ったイギリス人がいかにも話したそうに聞いてきた。

これは、知らないというしかないし、実際に知らなかったが、ワードを聞いただけでワクワクしたのを覚えている。

フォレストガーデンの設計や講師をしていて、苗木も販売しているという彼はその魅力を丁寧に説明してくれた。

「本当に、例えるなら エデンの園 だよ。エデンを創るんだ。」

目がキラキラしている。

そこには、果樹があり、野菜になる植物があり、薬草や染め物に使える木、木陰になる大きな木があり、鳥が訪れ、人間もその一部に加わるのだ。まさに エデンの園 だ。

それが自然に維持されるシステムを分析して理解し、人間の手で創り上げていくという。

そんなことが実際に可能なのだろうか。まるで神様だ。

 

それから数日後、持続可能な暮らしをしている少し大きめのコミュニティーを訪れていた。

その地は数十人の外国人メンバーで創り上げられ、中心にある大きな母家と周りを囲む小さな家々とドミトリーは全てマッドハウス、壁にはボトルが嵌め込まれたりしていた。土地から愛情が感じられる。訪れたときはオーナーが替わっていて、人気はなく、若い子連れの夫婦だけで運営されていた。

たくさんの人がその手で一つ一つ、試行錯誤して創り上げた形跡があちこちに残っていた。母屋の2階にあった小さな図書館もそのうちの一つだ。

 

そこにこの本はあった。

 ”Edible Forest Gardens”  〜食べられるフォレストガーデン〜

少し分厚くて大きな本だ。Vol.1と2がある。

つい数日前に教えてもらったアレだ。

この本があるということは、ここにはあるかもしれない。そのフォレストガーデンというものが。そう思ってオーナーに尋ねてみると、あったのだ。

このフォレストガーデンはもう5年以上放置されているという。オーナーは知っている知識を絞り出して案内してくれた。そこは若干ジャングル化していたが、確かに果樹や野草がたくさん生えている。

まるで自然に生えてきたかのように、ひっそりと至る所に果樹薬草混在しているのだ。話を聞きながら色んな葉っぱや果物を摘んでは食べて20分ほど歩いた。

「今は荒れてるけど、少し整備すればまたガーデンに戻るよ」

オーナーは当たり前のように言っていた。本当に、このガーデンは生物学的に持続可能で、少ない維持管理色んな食べ物を供給してくれるようだ。

そこからフォレストガーデンにどっぷりとハマり、色んなフォレストガーデンを巡り、実際に作業させてもらったり、コースを受講したりしながら旅を続けた。

 

そして現在、まずこれを創ってみよう!新見に。
創るときは同じシステムを利用するが、生産性や作業効率も考慮しよう(アグロフォレストリー)。という活動に挑戦しているわけだ。

 

2021年2月 : 打診。

 

協力隊の活動は自由度が高く、圃場も住まいも自分で探す。

どちらも決まるまでに若干手こずったが、色んな人と交渉しながら移住して2ヶ月半でどちらも無事に確保することができた。

さて、ここからだ。

土地には茅や小さな木が生えて荒れ放題。そしてここは豪雪地帯。もうすぐ雪が降る。慌てて市内のリース会社に機械を借りたり、地域の人の助けを借りて開拓に取り掛かった。

住まいは圃場近くの小さな小屋、にその4倍ほどの面積がある畑が裏側にある。小川も流れている。

田舎暮らしは十分に満喫できそうだ、がオフィスには適さない。

活動についてSNS発信しなければ、という考えはいつも頭の隅にあったが、そんな余裕もなかった。

まずは暮らしに慣れることからだっだ。

 

巡り合わせか、広い新見市の中でも、快適な空間がある新見市移住交流支援センターは住まいから割と近く、日頃からよくフリースペースや事務所を作業で使わせてもらっていた。さらに、同年代のセンタースタッフ達は気さくで話しやすい。訪問した際には暮らしや協力隊の活動についても相談させてもらっていた。

移住してそろそろ半年。暮らしにもようやく慣れてきた頃だった。

そろそろSNS、なんとかしないと。

と頭の中で若干拗らせていた。考えると気が重い。SNSとか、文章を書くのは苦手だ。

 

その日も事務所で作業を終えて、帰ろうとしたときだったと思う。

 

「(新見市移住交流支援)センターのスタッフって、興味ある?」

 

確かこんなくだりだった。

打診をくれたのはセンター長。初代新見市地域おこし協力隊の先輩でもあり、着任前からお世話になっていた。

業務内容には記事の作成が含まれる。苦手意識を克服する方法はただ一つ。

とりあえず、やってみる、だ。 ありがたいお誘いだった。

「どうぞよろしくお願いします。」

こうして、協力隊の活動外で新見市移住交流支援センターのスタッフとして記事を書かせていただけることになった。

内容は、協力隊の活動内容に沿った田舎暮らしについて

土地も暮らしも、これからどうなっていくか、楽しみだ。

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