今回は土地探し。
新見市は広い。
淡路島がすっぽり入ってしまう大きさだ。
シンガポールよりもまだ広い。
そのうちの人が住める場所や農地は実はそんなにない。
数字で見ると、新見市の8割程度に収まった東京23区が「 森 」という具合だ。
といっても実際ピンとこない。
とりあえず、その中の遊休地をひとつずつ足で回ってどこにするか決めるには3年という任期では時間が足りない。
GIS(Geographic Information System)を使えばあっさりと地域が絞れるかもしれないが、その時そんな知識はなかった。
ということで、インターネットで調べられる情報でできるだけ地域を絞って現地視察という普通のステップを踏んだ。
まずは、土地選びの条件から、
土地選びの条件
・ 年間気温 / 降水量
・ 地域の日照量
・ 大まかな地層
・ 傾斜方向
・ 地目
・ 面積
・ アクセス
・ 周辺施設
これらはある程度正確な情報がインターネットで簡単に手に入る。
優先順位の高いものには具体的な数値基準や希望条件を決めておく。
例えば、
年間気温 / 降水量 :最低気温−5℃以下
日照量 :1日3時間以上7時間程度
土壌 :粘土層、石灰岩層は避ける
傾斜方向 :南向き>西向き>東向き>北向き
地目 :原野>畑>山林>田
面積 :40アール程度で拡大の余地あり
アクセス :都市から1時間以内
周辺施設 :観光施設、宿泊施設が車で30分圏内にある
こんな感じ。
さて。
まずは気候調査。
気象庁
HPで過去何年分ものデータが無料で閲覧できる。大変ありがたい。
少し細かい話になるけれど、気候調査は注意が必要だ。
気候変動の影響で過去1年分のデータだけではよくわからない。過去10年ほどのデータは確認した方が無難だ。さらにその時点で植えたい果樹があったので、それが生産されている主な場所との比較もしておくと無難だろう。
ということで、カナダやアメリカ、イタリアのデータを確認したりした。
地味な作業だ。
一つ一つデータを引っ張ってきて、ひたすらExcelに落とし込む。そして、グラフを見てなんとなくわかってくる。単純で地味な作業は嫌いじゃないし、安心材料はあるだけいい。
代表地点をとりあえず新見の中心にしておけば、広い市内の中で微妙な調節ができる。もうちょっと寒い方がいいのか、暖かい方がいいのか、雨が降ったほうがいいのか。。。±5℃の温度差は植物にとって大きい。
ここまできたら市内で目星をつけた地点周辺のデータ確認をして地域を絞っていく。
そして今度は
国土地理院・全国農地ナビ・Google Map
の登場だ。
データ閲覧無料。うれしい。
新見は山間地域のため、山の斜面の向きには注意が必要だ。
当たり前だが、山の西側斜面は朝日が遅くなるし、東側斜面は午後の日照が得にくい。谷は日照を得るのがとても厳しい。
そういうことに注意しながら地域から地区ぐらいにまで絞ったら、その地区に遊休農地があるか、地目、面積、現状、周辺アクセスなどを確認する。
そしてようやく
現地視察。
調べる当初より見るのが数倍楽しみになっている。
とりあえず準備できることはしての着任式だった。
市長にこういう条件で土地を探したい。。。
と話をすると
「高瀬なんかいいんじゃない?あの辺は新しいことしている人もいるし」
と即答だった。
やっぱり地元の人の知識はまちがいない。
しかも、ネットですぐにはわからない情報付きだ。
現地視察では確認したいことを項目にあげて、絞り込んだいくつかの地区に行ってみた。
・ 現況(生えてる雑草・樹木の確認)
・ 水源の有無
・ 冬至と夏至の日照時間
・ 傾斜角度(作業が大変にならないか)
・ 水捌けの良さ
・ 土質 / 酸性度
・ 地域の産業
・ 土地の持ち主
・ 以前の土地利用
・ 地域性
・ 地元の人の評価
・ 近くに頼れそうな人がいるか
・ 土地の持ち主の意思
こんな感じ。
時間に余裕があればこの調査にたくさん時間を費やしたい。なぜなら、
現状や水源の有無、傾斜、日照時間はこれを見て調べたり、そこに立ってアプリを使って測量すればだいたいわかる。
問題はこの絵からわからないことや、その周辺に住んでみないとわからないことだ。絞り込んだ地区に一年住んでじっくり精査してもいいぐらいだが、今回はそんな時間はないのでできるだけ周辺住民の話を聞くしかない。
そんなこんなな工程を踏んで周辺を視察しているとき今の土地に巡り合った。
思わず車を止めて、土地をちゃんとみてみようと思った。
荒れている。
厄介な多年草があるし、木が生えている。
が、今わかるその他の条件は悪くないし、
項目外だったが、風景がとても美しかった。
誰の土地だろう。。。
その時点で候補地はいくつかあって所有者に話を持ちかけたりしていたが、どれもなかなか厳しかった。
よし、ここ、当たってみるか。
ということで、地元の人に話を聞いてみると色々とその他の条件も悪くなさそう。
話はとんとん拍子に進み、現地視察開始2ヶ月で土地を無事に確保することができた。