森を食べたい / エデンの園_話09

これまで

自分の土地について知ること「森を食べたい / 土地を知ろう_話05」や、植えたい植物リスト作り「森を食べたい / 何を植えよう_話07」、雑草との共存「森を食べたい / vs.雑草_話08」についてお話ししてきた。

ここまで読み進めていただいて、お庭や小さなスペースに少し草木を植えてみようかな。とワクワクが浮かび上がってきて頂けたなら私としては大成功だ。しかし、食べられる森を創る。となれば、まだ謎が残っている。

エデンの園を具体化する「森を食べたい / 森を食べたいに至る_話00」ためにはその理想の姿が想像できている必要があるし、自然の森を模擬する「森を食べたい / let’s foraging!_話06」ためにはその構造がわかっている必要がある。

そこで今回は、理想のエデンの園の姿を少しずつ読み解いていきたい。

エデンの園

は生物多様性が豊かで果実が実る木々がある楽園の例えだ。一番に思い浮かぶのは、アダムとエヴァ、リンゴやオリーブの木、小鳥や動物がいて、水場がある開放的な空間が描かれた西洋の絵画だろう。

日本におけるランドスケープの歴史では、「園」は囲われた畑の意味し、そこでは野菜や薬草、果樹などいろいろなものを育てていたそうだ。

その歴史は古く、紀元前にまで遡るというので、持ち主が必要な山菜や薬草の種や苗を自然の森で見つけては自分の園に植え、育て、増やす、という作業をしていたに違いない。

植え方にロジックがあったかどうかはわからないが、好きなものを好きな場所にばかり植えていると、そこは間違いなく「困った園」になる

一番起こりうるのが植栽密度の高さによる日射量不足だ。日照は植物の成長に必要な要素だが、人間にとっても空間の「心地よさ」を左右する大事な要素になる。

食べられる森は「エデンの園」が例えになるように、コンセプトの一部に楽園がある。

楽園の個人の定義はさておき、自分が頻繁に通う場所になるだろうから、

そこが「心地良い」と思うような空間にしたいものだ。

「心地良さ」を感じる空間要素

一つの土地の中に異なる雰囲気や用途をもつ空間を造り出すには、建物を立てる、樹々を植える、水や石などの自然素材を使う、などの方法がある。そして、これらを使って造り上げた野外空間で、人々が「心地よい」と思うのには共通点がある。

日射量

「困った園」では何が起きたかというと、樹が大きくなるとわかりつつも、苗が小さいとついつい間隔を狭く植えてしまいがちで、樹が成長した時には樹と樹の間隔が狭くて空間が暗くなるということ。

林冠鬱閉度とは、見上げた時に樹冠がどのくらい空をカバーしているかを百分率で表したもので、100%で樹木に隠れて空が見えなくなる。現在の人工林はこの林冠鬱閉度が100%の場所が多く、「昼間でも薄暗くて入りにくい、怖い」というのが人々が外から見て感じることだろう。

因みに落葉高樹林が葉を落とした秋冬で林冠鬱閉度50%ほど。逆に林冠鬱閉度0%とは、頭上に日陰がない場所となり、特に夏場の日中は長時間滞在することが難しい場所になる。適切な場所に適切な日射量を確保するためには、樹を購入する前に樹冠幅を調べ、植える時に確実に測る、という作業が意外と大事になる。

見通し

屋内ではよく、広い・狭い、で感じ方の論議があるが、野外空間の場合、空間の「広さ」よりも「見通し」の方が感じ方の大きな要素となる。

例えば、芝生や牧草地などの開放的な空間は明るく開放的な気持ちにさせてくれる一方で、「どこからも丸見え」でプライベートな落ち着きは感じにくい。生垣などの目隠しに使える樹々を植えることは、野外でも見え隠れする空間や、完全に閉鎖的な空間を産み出すことができる。樹を選ぶ時は、よく生垣として使われるカイヅカイブキやカナメモチなどの足元から葉を広げる樹を選ぶことで隠す範囲もコントロールすることができる。一方で、完全に外部から見えない空間は防犯面では逆効果のため注意が必要だ。

風の強さ

強風は体力を消耗する。そして、無風よりもわからない程度のそよ風が流れている方が心地が良いと感じるようだ。風の強さは防風林を植えることで調整されるが、見通しで紹介した生垣は防風林としても機能する。樹によって枝葉の密度が異なるので、どの程度の風が吹く場所で、どの程度制限すれば良いのかのサイトアナリシスをするのが無難だろう。

香り

風の強さは香りにも影響を与える。風が運んでくる周囲からの香りや植物から出る香りには好き嫌いがあるだろう。いわゆる「森の香り」とは、スギ・ヒノキの香りを指すと思うかもしれないが、植物は多かれ少なかれ独自の香りを発散していて、すべてが風で混ぜられて「森の香り」が生まれる。

森林浴で「フィトンチッド」と呼ばれる言葉を聞いたことがあるかも知れない。これが「森の香り」を指し、「フィトンチッド」がもたらす癒し効果が一種の健康法として期待されていることは間違いない。また、春先に風に運ばれてくるモクレンの花の香りや、秋のキンモクセイの花の香りは四季を感じさせてくれるとともに、アロマセラピーのようなリラクゼーション効果があることだろう。

生物多様性

四季で香りを楽しみたい場合は様々な樹を植える必要があるが。ここでは樹木の種類の数を少し広い目で見てみたい。例えば果樹園と公園の雑木林。同じ種類の樹ばかりがある空間と、様々な種類の樹がある空間。整列しているかランダムかの要素は一旦置いておいて、多様性だけの観点で考えてみる。目に見える雰囲気の違いが最初に思い浮かぶが、実は見えないところでも大きな変化が起こっている。

植物の種類が増えるということは、それを餌とする動物の種類も単純に増えるということ。木の葉を食べる虫などが増えれば、その虫などを食べる動物も増えていく。その数は生態ピラミッドに則って増えていくことになる。昆虫に関しては好き嫌いが分かれるかもしれないが、楽園には色々な種類の小鳥がさえずりが聞こえて小動物が訪れる、というのが物語ではないだろうか。

気温・湿度

快適と感じる温湿度に、温度17℃以上28℃以下、相対湿度40%以上70%以下という数値があるらしいが、野外ではコントロールが難しい。しかし、木を植えて木陰を作ったり水辺を作ることで少し変化させることができる。

食べられる森

は単に植物が植わった果樹園ではなく、人々が心地よく過ごせることが大切な要素だと思う。

住んでいる場所の近くに、外でゆっくりと心地よく過ごせる場所があり、そこには果樹も植わっていて季節ごとの果物が楽しめたりする。そんな楽園が増えたら、世の中のいろんなことが少しだけ変わるんじゃないか。と思う。

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